イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「……え?」
たかが?
一瞬の空白。
軽く肩をすくめた坂田くんを、穴が開くほど見つめてしまった。
そんなわたしの様子に気づいたんだろう。
「あ」ってバツが悪そうに、切れ長の瞳が揺れた。
「言い方きつかったよな。悪い、ちょっと寝不足で気が立ってるのかも」
そっか。
やっぱり不足って、睡眠のことだったんだ。
「う、ううん。大丈夫。気にしないで。忘れて」
「ごめんな。イブは無理でも、どこかで必ず時間作るから」
「うん……わかった」
乾ききって慄く唇を、なんとか引き結ぶ。
打ちのめされた自分を、必死で押し隠しながら。
イブは、無理――それはつまり。
わたしじゃない。
わたしじゃ、ない。
彼がイブを過ごす人は、他にいる。
その人が、本命――……?
震える手で拾い上げた缶は、もうすっかり冷めていた。