イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

間仕切りを取り払ったそこには、掘りごたつ式のテーブルがずらりと並んでる。

今日は1年に1度、全国のYKD支社から同期が集まる同期会。
50人程度の男女があちこちで乾杯を繰り返し、大盛り上がりの真っ最中なのだ。

目立たない片隅に座りこんで、襖に背を預ければ。
隣からも賑わいが伝わってくる。
季節柄、忘年会ってところも多いみたい。
満員御礼のようだ。

残念ながら本日、坂田くん、そして飛鳥は欠席。

年末進行――クライアントや媒体の年末年始休暇に合わせて、すべての制作日程が繰り上がって進む、殺人的な年末スケジュール――で12月が忙しいのは毎年のことだ。
こんな時期に同期会設定するなんて、とか飛鳥も幹事のこと怒ってたっけ。

でも坂田くんはこういう場に欠かせない人だし、もしかしたら都合つけて来てくれるかも、ってちょっとだけ期待してたのに。

甘かったみたい。

「会いたかったなぁ……」

賑やかな宴を遠巻きにしながら、こそっと本音が零れ落ちる。
忙しい彼とは相変わらず会えない日々が続いてて、たったそれだけのことに、なんだか毎日が色を失ってる。

不安があるから、余計にそう感じるのかもしれない。

< 275 / 539 >

この作品をシェア

pagetop