イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

さらっと言われて、三井さんがムッとしたのが伝わってきた。
たぶん、暗に背が低いって言われたようで、気に入らなかったんだろう。

「彼女はぼくのクライアントなんです」

押し問答が始まりそうな気配に、ちょっとうんざりする。
本気でトイレ、早く行きたい……

吐き気がこみあげてきて、片手で口元を覆った時だった。


「美弥子ォ!」

背後から聞き覚えのある声に呼ばれて。
なんとか重たい頭を動かすと、恵美がバタバタと駆けてくる。

「あんた大丈夫かいな、全然戻ってこーへんから心配したやんか。もーあんた強いと思って飲ましたあたしが悪かったわ。あ、この子、連れなんで、引き取りますね。えらい、ご面倒おかけしました」

口は悪いし態度はデカいけど、根っこは優しいんだよね。
そこが彼女のいいところだ。

お礼を言って、ありがたく肩を借りた。

ほとんど引きずられるみたいに歩き出したわたしを、「中村さん」って声が呼び止めた。三井さんだ。
「ぼくでよければ、ヤケ酒いつでも付き合いますから。その時は、連絡ください」

わたしは返事に迷って……小さく頭だけ、下げた。

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