イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
ふいに、地面がドロリと溶けていくような心地がした。
――あのな、黒部さんに聞いたんやけど、あの人田園調布に住んどるボンボンらしいで!
どうして忘れてたんだろう。
――実は自分もこの近くに住んでるんですよ。
あの人は、綾瀬に、うちの周辺に住んでるって言ってた。
つまりそれは、嘘だったってこと?
あぁ、それだけじゃない。
――ちょっとぉ、坂田と付き合うてたて、なんで言わへんのぉ!
――今さっき飛鳥から聞いて、腰抜かすかと思うたやん。
恵美は、今日まで知らなかった。
坂田くんとわたしのこと。
なのに。
――あ、えと……すみません、椎名さんから聞いてしまいました。
――やっぱりあの彼のことが、忘れられませんか。あんなエリートなイケメンですもんね、僕なんかと全然違う。
あの人は知っていた。
坂田くんがどんな人かってことまで、よく知っていた。
まるで、調べたみたいに……
『聞いてる、中村さん? いいかい、十中八九間違いない。狙われてるのは坂田じゃなくて、君なんだ!』