イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「しのぶさん、すぐに検査を受けましょう。手遅れになったらどうするんですか?」

たまらず叫ぶように言うと、くっきり二重の切れ長の瞳が、ふわりと柔らかく緩んだ。

「美弥子ちゃん、ほんとにイイコねえ。あなたみたいにしっかりした子がいたら、慎太郎も安心ね。もう思い残すことは何もないわ」

お、思い残す?

達観したような口ぶりに、ゾクッとした。
“死ぬことを考えてる”、坂田くんの言葉がリアルに迫ってきたから。

「や、やだな……何言ってるんですか。そんな90歳のおばあちゃんみたいな……」

静かにしのぶさんが首を振り、わたしは口を噤んだ。

「同じなのよ、今の私。あの人が、亡くなる少し前に言ってた症状と。頭痛とか微熱とか、怠さとか……。なんだか因縁めいてるでしょ? そうしたら、最近あの人の夢をよく見るようになって。私にね、彼が何かを言おうとしてる夢。もう、彼に呼ばれてるような気がして仕方なくて……」

熱を帯びた眼差しが、じっと宙を見つめてる。
その場にいない誰かを見ているのだと気づいて、ギュッと心臓を押さえた。

本気で、後を追おうとしてる?

何か言わなくちゃ、止めなくちゃ、と乾いた口をパクパク動かしつつ。
救いを求めるように隣を見るんだけど。

坂田くんも英二くんも、苦しそうに眉を寄せて視線を落としたまま。
何も言わない。

嘘でしょ、何か言おうよ。ほら!

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