イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
この気持ちを、どうやって伝えればいいんだろう?
迷いながら、必死で言葉を選んだ。
「……こうは、考えられませんか、逆だって」
「逆?」
「もしかしたらご主人は、しのぶさんが無理をしてるよって、体調を崩しかけてるよって、教えたかったのかもしれません。あなたのことが大切だから。これから先もずっと、笑っていてほしいから」
「ずっと、笑って……?」
心細げなつぶやきごと包み込むように、ベッドの上に投げ出された華奢な手を、自分の両手で握りしめた。
「そうですよ」
こぼれそうな涙を堪えて、なんとか不格好な笑顔を作る。
「天国へのお土産話は、多い方がきっとご主人も喜びますよ。検査して、元気になって、そしたらわたしと、いろんな楽しいことをしましょう。一緒に旅行に行ったり買い物したり、美味しいものを食べたり!」
「旅行? 美弥子ちゃんと一緒に?」
ぴくっと反応したその手が、思いがけない強さでわたしの手を握り返してくれて嬉しくなった。
「はい、一緒に!」
気づけば、さっきまで紙のような白さだった頬に、わずかだけど血の気が戻っている。