イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
あぁ、わたしたちのさっきの会話かと思い出した。
やっぱり相当前から目が覚めていたらしい。
「確かに毎日がバタバタあっという間で、悲しみに浸る暇もなかったけど。あなたたちのせいで、泣けなかったんじゃないから。あなたたちのおかげで、泣かずに済んだのよ。くよくよしてられない、この子たちのために頑張んなきゃって、踏ん張れた。だから……ありがとね」
そう言って、朗らかに笑うしのぶさん。
ツヤツヤのお肌、シミもくすみもない、年齢不詳な美魔女。
芸能人みたいに若々しく美しくて……それでもやっぱり、それは母親の顔だった。
「っ……」
あぁダメだ、再び涙腺決壊の予感を感じさせる視界に、目元を赤くしてうつむく英二くんが映る。
坂田くんは……と仰ごうとしたけれど。
その前に少し強引に抱きすくめられ、固い胸に頬が押し付けられて。
彼の表情を確認することはできなかった。
「あらあら、みんな泣き虫ねえ」
揶揄うような声音で言われて、頭上から何かを誤魔化すみたいな咳払い。
そうしてようやく、「心配して損した、もう全然大丈夫じゃねえか」と坂田くんは仏頂面を上げ、ゴソゴソってポケットを探り出した。
ん? なんだろう?