イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
見つめていると、何かを取り出して――
「平気そうならこれ、返しとく。見たくないって言ってたけど、やっぱりお袋が持ってた方がいいと思うから」
ポトン、としのぶさんの手の中に落とされたもの、それは――あのジッポーだった。
「うわぁ……懐かしい」
しのぶさんは、そう言ったきり口を噤んで。
長い間無言でそれを眺めてから、おもむろに話し出した。
「……ねえ美弥子ちゃん」
「はい」
「これね私が主人にあげたの。付き合い始めて初めての、クリスマスに」
「そうなんですか。素敵なクリスマスプレゼントですね」
「それほど高価なものでもないんだけど、彼、すごく気に入って。これしか使わなくて。新しいの、買えばいいのにって何度も言ったのに、これがいいんだって、聞かなくてね……」
語尾が震え、
ぽたっ……
シルバーのフォルムに、雫が落ちて、跳ねた。