イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
2人がそれぞれクライアントに捕まり、ようやく逃げ出すことに成功。
壁際に避難したところで――
会場内の照明がすぅっと暗くなっていき、代わりに壇上に上がっていく司会進行役の新条課長をスポットライトが照らし出した。
一斉に集まる多くの視線をぐるりと見渡し、おもむろに口を開く。
【本日はお忙しい中、弊社の創立記念祝賀会にご来場いただき――……】
低い美声が紡ぐ挨拶に耳を傾けつつ、チラチラとお目当ての姿を探すんだけど、やっぱり薄暗い中じゃ見つけるのは難しいな。
少しがっかりしながら、その人へと思いをはせる。
もしかして、わたしだけ、なのかなぁ。
こんな風に焦れったい想い、抱えてるの……。
宇佐美さんたちの指摘通りだ。
あれから1か月以上経つのに、わたしたちはまだ、そのぅ……そういう関係には至ってないんだよね。
檀上で始まった来賓の挨拶を遠巻きに眺め、ふぅと吐息をつく。
バタバタしてた、っていうのは事実。
もっとセキュリティのしっかりしたアパートに今すぐ引っ越せ、と坂田くんに言われて。
わたしもその方がいいなと思って物件を探そうとしたら、彼がちょうどいい部屋があるって……
正直に言おう。
もしかして同棲が始まるんじゃ、と期待してしまったのはわたしです、ハイ。
ところが、そうはならなかった。