イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
まぁさすがに、言えないけど。
わたしから襲おうなんて、考えちゃいないけど。
やっぱりその……物足りない思いはあるわけで。
悶々と考え続けて、ついに自分の覚悟を見せるべきだという結論に達した。
そして今日そのために、わたしは一つの決意を固めてここに来ている。
それは――
「みーやこ」
軽やかな声と共にぽんと肩を叩かれ、ハッと顔をあげた。
「飛鳥!」
「準備、お疲れ様」
壇上で続くスピーチの妨げにならないよう声を潜めつつ、「残業してたでしょ、大変だったね」と労ってくれる。
「毎年のことだしね、もう慣れたよ」
こちらも小声で答えつつ、おぉ、と密かに目を瞠った。
今日の飛鳥のファッションは、グレーのパンツスーツ。
色こそ地味だけどジャケットの裾がふんわりドレープになってて、パールのネックレスと相まって、いつもよりぐっとフェミニンな印象だ。
今日一日でまた、飛鳥のファンが量産されることだろう。
矢倉さんも心配だろうな、なんて心の中で彼氏さんに同情していたら、
飛鳥がふと、さらに声のトーンを落としてきた。
「そういえば、坂田のお母さん、検査の結果はどうだったの?」
坂田くんの許可をもらって、飛鳥には大体の顛末を説明していたから。
気にしてくれてたんだろう。
「うん、それがね」
と、わたしは彼女に顔を寄せた。