イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
慌ててその分だけ後退……しようとして、ガタン! ドアに阻まれ。
そのまま窓とシートとに手をついた彼に、のしかかるように囲われて。
息ができなくなる。
「ちょ、なんの、真似っ……」
「オレが言いたかったのは、こういうことだ。助けてくれた礼は言う。が、――」
至近距離だから、わかってしまった。
夜の海みたいな凪いだ瞳が一瞬波立ち、その奥へ、不穏な何かが横切ったこと。
「抱きたいって、欲しいって言ったよな? 残念ながら、オレの中に欲しいものを諦めるって選択肢はねえんだよ」
それはまるで、獲物にとびかかろうと身構える獣のような目で――
やめてよ。
やめてよ。
そんな目で見ないで。
そんな、ほんとにわたしを欲しがってる、みたいな……
「むむむ、無理だよ。そんな、わたしはっ……恋人でもない人とそんなことっ、できない」
狭い空間の中、必死で彼の肩を両手で押しやりながら、首を振った。
すると。
暗がりの中で、彼の唇がふわりと綻ぶのが見えた。
難解な公式がやっと解けた、とでもいうみたいに。
「……なるほどな。じゃあ、恋人になろうぜ」