宇佐美くんの口封じ





依里、と呼ぶ彼女──麻央さんは、あの写真を消してくれただろうか。


元々麻央さんにとっても目障りだったのは私だったから、“みんなの宇佐美くん”が帰ってきて安心しているのかもしれない。



彼女は私の存在に気づいても、あの時みたいに睨むようなことはしなかった。


…けれど代わりに、




「…依里、いいの?」

「、関係ない」

「でも、………やっぱなんでもない」



急に捨てられた私をかわいそうに思ったのか、宇佐美くんに何かを言いかけて言葉を呑み込んでいるようだった。



…いいのに。

私のことなんか気にしないで、宇佐美くんのそばにいなよ。

貴方は何も考えずにそばにいられるんだからそれでいいじゃない。

「やっぱり暇つぶしだったでしょ、ざまあみろ」って、あざ笑ってくれればいいのに。




その方が、よっぽど私は救われる気がした。


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