それからの日々
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洋史の妻は当時、大手百貨店で催事場の衣料品(アパレル)部門で買い付け(バイヤー)の仕事をしており、全国を飛び回っていた。

中間管理職として部下を率いる身では、「子どもがいるから」という理由なんかでは定時に帰れないし、彼女自身もそんなことくらいで帰りたくなかった。

部下の中には、自分よりも学歴の高い男性社員がいる。「だから、子どものいる女は……」とは、絶対に言われたくなかった。
百貨店(デパート)は女性社員が圧倒的に多い職場だが、管理する側の役職のある人間は圧倒的に男なのだ。

だが、男女雇用機会均等法が施行されて数年が経ち、百貨店内(社内)がようやく女が男と肩を並べられる仕事ができるかもしれない空気になってきた。

幸いなことに、息子はもう小学生になっていた。

『おかあさんなぁ、忙しくて夕飯の時間に帰って来られへんのよ。おとうさんも、研究所に篭ったらなかなか帰って来はらへんし。
せやから……悪いけど、ほか弁でも買って食べててくれへん?お金は渡しとくから』

彼女は息子の前で手を合わせた。

『頼むわ……お願い、智史。
「もう小学生」やねんから、できるやろ?』

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