終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
「…橘プロの新人?モデル?女優?それともアイドル?」
「ただの一般人」
嘘!?とわざとらしく驚いてみせ、結の手が塞がってるのを言いことに結の眼鏡を剥ぎ取った。
「あなた、なんでこんな眼鏡してるの?こーんなに可愛いのにもったいない!この私だって妬みそうになるぐらいの顔面なのに!」
眼鏡を取られた結は必死に俯いて顔を隠そうとするけど絵麗奈に顔をがっちり固定されてしまい絵麗奈と見つめ合う羽目に。
眉を八の字にして困り果ててる結の顔が可愛くて少し絵麗奈に感謝。
「可愛い…すごい可愛い。なるほどね、律兎が今まで特定の彼女作らなかったわけがわかった気がする。このレベルの子が御所望だったのね」
「彼女じゃないから」
「嘘。律兎がこんな可愛い子とこのマンションで暮らしてて我慢できるわけないでしょ」
「訳ありなんだよ。もういいから離してやって。荷物持ってて重いんだよ」
手が使えないので足で絵麗奈の靴をコンコンと叩く。
「…まあいいわ。眼鏡ごめんなさい」
結の頭を撫でて眼鏡をかけ直してあげると、とうに閉まってしまってしまったエントランスのドアのオートロックを再び解除してくれた。
「彼女じゃないなら私と遊んでくれてもいいのに、律兎の片想いなのかな?」
「もう黙れよお前。おいで結」
ドアが閉まってしまう前に通り抜ける。
閉まる直前聞こえてきた「またね、結ちゃん」という絵麗奈の声に俺は振り返らなかった。