終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
それでも、少しずつでも結の心の中に入れていければ。
できあがったオムライスを見つめ、ケチャップを手に取った。
「お待たせ」
オムライスの盛り付けられた皿を2つテーブルに運ぶ。
ゲーム機を置いて視線をうつした結はオムライスを見て目を見開いた。
「これ…」
オムライスにケチャップで書かれた『めしあがれ』の文字に驚いた顔で俺を見る。
「和臣さんがヒロインに初めてオムライス作った時にケチャップで書いてたやつ。再現してみた。やっぱ、和臣さんの唯一の得意料理だからオムライスリクエストした?合ってて良かった」
「どうして」
「実写の和臣さんは俺だよ?原作でも人気のシーンだし、実写でもこのシーンあったから。…結の気を少しでも引きたくて」
嫌そうな顔をすると思ったけど表情は変わらずオムライスに視線を落とす。
そして少し笑って口を開いた。
「…私、このシーン大好きなんです。家出してきたヒロインが街で男の人に絡まれて、和臣さんが助けてくれて、家に帰りたくないっていうヒロインを家に泊めたときに作ってあげたオムライス。和臣さんなりにはげまそうと思って考えて書いてるのが可愛くて、それなのに『めしあがれ』って、笑っちゃいました」
嬉しそうな顔。
ホントに好きなんだ。
「硬派な和臣さんらしいよね。『がんばれ…いや違う、笑って…何様なんだよ』って1人で葛藤してるとこ」
「それ、和臣さんのセリフ」
「だから、演じたんだって俺。原作とまったく一緒じゃないとこもあるけど撮影からそんなに期間空いてないし多少は覚えてる。ご希望ならいくつかセリフ言ってみるけど?」