心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「でもさ。なんだかんだ言って 麻里絵も ずっと 純也君を 好きだったんだと思うよ。私は。」

突然 純也から 私へと 矛先を変えた理沙。

「えー。そうかな…?」

座ったままの私は 甘く 純也を見上げる。


「そうよ。純也君に 告白されて 断ったのに。純也君は いつも近くで 麻里絵を見守っていたわけじゃない?付き合う前から 麻里絵は 純也君を 心の支えにしていたんだよ。」

理沙に言われて 私は フッと思い出す。


打合せのたびに お客さんの性格や希望を 

細かく 伝えてくれた純也。

他の営業マンは そこまで してくれないけど。


一回目の打合せは 近くで様子を見ていて。

さり気なく フォローしてくれた。


いつも いつも……


私は 純也が担当の 打合せは いつも楽しみだった。


私は 純也がいたから 仕事にも 自信が持てた。


多分 付き合うなら 純也だって 

私は わかっていたのかもしれない。


だからあの時 純也に 過去を話した。


こんなに 長く 深く 愛されていたから。


「まりえが 一番辛い時 理沙ちゃんが 支えてくれたから。これからは 俺が 理沙ちゃんの代わりに まりえを支えるよ。」

純也は 理沙の方を見て 言う。

胸に 熱い思いが 込み上げて 私は 泣き出してしまう。



「理沙。どうして まりえちゃんを 泣かすの?」

謙介さんの 咎める声を 聞きながら

私は 小さく しゃくり上げる。


「やだ。私じゃないわよ。泣かせたのは 純也君よ。」

理沙は 跪いて 私の涙を 拭いてくれる。


「もうすぐ お義父さん達 来るのに。そしたら また泣くでしょう。」

純也の 呆れた声は 愛情が いっぱいで。


ウエディングドレスじゃなかったら

理沙達が いなかったら

私は 純也に抱き付いて キスしたいくらいだった。




< 110 / 112 >

この作品をシェア

pagetop