砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命



夢なのか現実なのかわからないほど、カインの意識は曖昧だった。


ここはどうやらよく知ったフォトキナ城の中庭のようだ。あちこちに花が咲き乱れ、草木も青々とした若葉をつけている。

その中庭に、少年が一人立っていた。
銀色の巻毛がキラキラと日差しを受けて輝いている。その立ち姿にデジャブを感じた。

ーーあぁ、これは思い出だ。だって、あれは少年時代の私だから。

少年がこちらを振り向く。
瞳を大きく見開き、うれしそうに破顔しながらこちらに駆け寄ってくる。

ーーあれ?私じゃない?

少年が近づいてくるにしたがって、違和感を感じた。
好奇心で輝く大きな瞳。まっすぐに通った鼻筋。その顔立ちはアベルのものだったからだ。

だが。
瞳の色がちがう。
アベルの瞳の色は淡い褐色、つまりヘーゼルだ。だがこの少年の瞳の色は、冷たい氷を連想させる、淡いブルー。

オルディン家の一族によく見られるアイスブルーの瞳だった。


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