砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「…ありがとう、モレー。そなたの勇気ある行動はオルディンを救うだろう。
…あいつには産むつもりはないのだろうか」

「カルヴィン様は、自分は殿下にとって娼婦のようなものだと思っていらっしゃいます。だからこそ、悩むことなく堕胎を選ばれた」

「バカな!!あいつはそんなふうに思っていたのか??」

アベルは膝から崩れ落ちそうになるのを必死でこらえた。
カインが女だと知ってから数え切れないほど何度もカインを抱いた。そのたびにカインは抵抗することなく受け入れてくれた。それは”愛情”なのだと思っていた。言葉なんて要らない。互いの肌を重ね、一つになることで心も通じ合う唯一無二の大切な存在なのだと。
それがまさか、快楽だけの行為だと思われていたのだ。

「カインと話をするよ。
産むように説得する。モレー、協力してくれるね」
「もちろんでございます。あぁ、やはりお知らせしてよかった。アルベルト殿下ともあろうお方が、幼少のみぎりよりお側にお仕えしていたカルヴィン様を娼婦代わりなどと信じられなかったのです」

アベルはモレーを伴い城を飛び出して、オルディン公爵邸宅へと急いだ。



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