砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
オルディン家の四女だったらアベルに溺愛されていた。
考えたこともなかった。女として愛されることなど、カインの人生には望むことさえできないことだから。
「アベルは…女の私を必要だと?」
「あぁ。
神に感謝している。この世でたった一人愛せる女性と巡り合わせてくれたこと。そして、愛する人に俺の子供を宿してくれたこと。
俺は今、影として兄王をたて、平凡で愚かな王子を演じ続ける人生が報われた気がしてる」
カインの頬を後から後から涙が伝う。口元を抑えても我慢できずに、嗚咽をもらしたカインをアベルはそっと優しく抱き寄せた。
「こんな日が来ることを夢に見ていた。だから、考えていたんだ。
筋書きはこうだ。
カイン、お前は病気療養を理由に一年間田舎に引っ込む。
お前と初めて結ばれた国境近くの森の奥の古城。実は改修工事も済んでいる。
そこで、お前は身の回りの世話をしてくれるオルディン家遠縁の娘と恋をする。その娘がカインの子供を産む。カインはその子供を引取り、オルディン家の子として育てる。
どうだ?悪くないだろ?もし男子が生まれれば、念願の跡継ぎだ」
「そんなことを考えていたのですか?無茶苦茶ですよ。
私は、何も望んではいけないのです。
望まなければ、何も起こらないから」
「あぁ。わかってる。今まではそうやって二人して多くのことを諦めてきたな。
でも、今回だけは譲らない。
それとも、お前は俺の子供は要らないか?
友情や主従関係でしか俺を受け入れられないか?」
アベルの言葉が、カインの心の奥に凍りついていた感情を溶かした。
ずっと蓋をして隠していた。気づかないふりをしていた気持ちが、カインの胸を熱くしていく。
考えたこともなかった。女として愛されることなど、カインの人生には望むことさえできないことだから。
「アベルは…女の私を必要だと?」
「あぁ。
神に感謝している。この世でたった一人愛せる女性と巡り合わせてくれたこと。そして、愛する人に俺の子供を宿してくれたこと。
俺は今、影として兄王をたて、平凡で愚かな王子を演じ続ける人生が報われた気がしてる」
カインの頬を後から後から涙が伝う。口元を抑えても我慢できずに、嗚咽をもらしたカインをアベルはそっと優しく抱き寄せた。
「こんな日が来ることを夢に見ていた。だから、考えていたんだ。
筋書きはこうだ。
カイン、お前は病気療養を理由に一年間田舎に引っ込む。
お前と初めて結ばれた国境近くの森の奥の古城。実は改修工事も済んでいる。
そこで、お前は身の回りの世話をしてくれるオルディン家遠縁の娘と恋をする。その娘がカインの子供を産む。カインはその子供を引取り、オルディン家の子として育てる。
どうだ?悪くないだろ?もし男子が生まれれば、念願の跡継ぎだ」
「そんなことを考えていたのですか?無茶苦茶ですよ。
私は、何も望んではいけないのです。
望まなければ、何も起こらないから」
「あぁ。わかってる。今まではそうやって二人して多くのことを諦めてきたな。
でも、今回だけは譲らない。
それとも、お前は俺の子供は要らないか?
友情や主従関係でしか俺を受け入れられないか?」
アベルの言葉が、カインの心の奥に凍りついていた感情を溶かした。
ずっと蓋をして隠していた。気づかないふりをしていた気持ちが、カインの胸を熱くしていく。