砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
物心ついたときから、言葉を交わすたびに父はカルヴィンに言い渡す。

ーー身を慎み、静観せよ。安閑たれ。
つまり、目立つことなく、表だったことはせず、ただ居れば良い。何もするな、ということ。

カルヴィンは、自室のソファに身を沈めると、天井を見上げた。
生まれてこのかた自由に一人で外に出たことはない。父の命令がなければ何もさせてもらえなかった。唯一、自由に読むことを許された読書も屋敷中の本は既に読破している。

次期当主として恥ずかしくない程度の教養を、ということで昨年より週に一度、師レオポルトに公爵としての教育を受けていた。

カルヴィンが顔を合わせることを許された人物も限られている。
父、師レオポルト、執事モリセット、乳母で世話係のモレーだけ。母は、出産の折に亡くなったと聞いている。
先妻の子である長女と次女は既に嫁ぎ、カルヴィンは、ほとんど会ったこともない。
カルヴィンと同腹の三女サラとも別に暮らしており、顔を合わせることはなかった。

そんな生活だったから、今回のことも国王直々の依頼でなければ、引き受けたりしなかっただろう。


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