砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「あーあ、こわれちゃった」
「また作ればいいさ。さ、もう遅い。片付け手伝ってやるから、早く寝なさい」
「アベル、またねるまえにごほんをよんでくれる?」
「もちろん」

大喜びでアルスは両手いっぱいに積み木を拾う。

「ごほん、なによんでもらおうかなぁ……」

先程まであれほどはしゃいでいたのに、積み木を片付け始めるとアルスは眠そうに目をこすりはじめた。

「アルス、もう休みなさい」

眠そうな様子にカインが声をかけるが、アルスはブンブンと首を横にふる。だが、今にもまぶたが閉じそうなくらい眠そうだ。

「まだねない!!アベルにごほんよんでもらうんだもん。……アベル……だっこして?」

アルスは甘えてアベルにしがみつく。アベルは笑いながらアルスの頭を優しく撫でてもう一度ふわりと抱き上げた。

「うふふ、アベル、だぁいすき」

アルスの声がアベルの胸を熱くする。父と知らぬ息子はそれでも無条件に慕ってくれる。それがとても愛おしくてたまらない。

「俺もアルスが大好きだよ」

そう言ってやるとウフフと笑った声が聞こえた。次の瞬間、アベルの肩の上でアルスは寝息を立て始めた。

ーー我が子というものは、これほど愛おしいものなのか。

アベルの育った王室では、国王としての業務が忙しい父はアベルをかまってくれなかった。母は早くに亡くなっていたし、親の愛情など知らなかった。
乳母をはじめ身の回りのことをしてくれる者たちも、あくまで仕事としてアベルを面倒見ているに過ぎなかった。
そんな自分が親となって、まさか、こんな感情が湧いてくるとは。


ーー悪くない。これが、幸せというものなのかもしれない。


「殿下、代わります。アルセウス様を寝かしつけて参ります」
「いいよ、モレー。もうしばらく、こうしていたいから。モレーも休みなさい。
あったかいなぁ。どんどん大きくなっていく。
子供の成長は早いから、今この瞬間をしっかり覚えておきたい」

これはささやかな親子のふれあいの時間なのだ。モレーは笑顔で頷くと自室へと下がっていった。
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