砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「俺、ブリュオーの言葉苦手なんだよな。カイン、お前しゃべれるよな?」

了承の返事は出来なかった。代わりにカインに向かって軽口をたたく。
だが、カインが返事をする前に兄王は残酷なまでに淡々と申し渡した。

「オルディン公爵はフォトキナに残ってもらう。公爵の頭脳は我が国の宝だからな」

カインと離される。
これが、決定打だった。
みるみるアベルの顔が怒りで紅潮する。こみ上げてくる怒り、焦りといった不満が一気に噴火した。

「そんな!無理です!カインが居なければ俺が何も出来ないことくらい、兄上が一番ご存知ですよね」
「あぁ、知っている。だが、オルディン公爵が病気療養している間はお前一人でもなんとかしていただろう?」
「あのときは師レオポルトの助力があったから。俺一人じゃ無理です。荷が重すぎる。カインの同行を認めてください」
「だめだ。我が弟だけでなく、オルディン公爵までブリュオーにくれてやるなんて勿体ない」
「この国には師レオポルトがいるじゃないですか」
「そもそも師レオポルトはお前のブリュオー行きを反対している。だが、両国の良好な関係を維持するためには必要なことだ。お前は得意の社交性を存分に発揮すればよい。これは決定事項だ」

興奮しているアベルに対し、兄王は冷静なままただ決定事項だと告げるだけだった。

こちらの意思を全く無視する兄に、アベルは恨みすら感じていた。


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