砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
愛の言葉はなくても、カインはアベルを必要としている。だから、一生カインの側に居て守って生きていこうと思っていた。
だが、いつもと変わらない様子のカインにアベルは気持ちが落ち込んでいくのが止められない。
体を求めればいつも預けてくれた。子供だって産み育ててくれている。愛の言葉はないが言葉よりもっと深いところにある心が通い合っていると思っていた。お互いにとってなくてはならない大切なパートナーだと。
だが、氷のオルディン公爵の心は、やはり凍てついていて誰にも触れられないのかもしれない。
「カインにとっては、都合のいいことばかりだしな。オルディン家の血筋の者が王位継承者となるわけだし。
俺が居なくなればお前の秘密を知る者が一人いなくなる。かえってせいせいするか」
わざと冷たく言い放ちカインの表情をうかがう。
こめかみがヒクリと一瞬こわばったが、それだけだった。
「今日はこれで帰ります」
くるり、とカインがアベルに背中を向けた。
その背中がいつもより小さく見える。やや背中を丸めてうつむき加減なのは、いつものことだ。そのうつむき具合がいつもより深く、弱々しい。