砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「カイン?」
「ブリュオーには高級娼婦を愛妾としてそばに置く習慣はありません。遊び相手は貴族専用の娼館で買うそうです。多くの女性とお付き合いをすることがステイタスのような奔放な国民性ですので」
「…お前は、高級娼婦のつもりか?
笑わせてくれる。こんな時、高級娼婦なら手練手管で喜ばせてくれるものだ。嘘でも笑顔で愛を語り、一緒に快楽の深淵に落ちていくものさ!」

アベルはそう言い捨て、立ち上がった。

カインもアベルに背を向けたまま体を起こそうとした。
その時、ポトンと体を支える手に雫が落ちる。
そこで自分が泣いていることに初めて気づいた。

涙に気づかないほど心が空っぽだった。
カインはアベルに気づかれないように涙を拭い、衣服を整えた。

「本日はこれにて失礼いたします、アベル…アルベルト王子」

カインは背を向けるアベルに深々と頭を下げて、部屋を出ていった。
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