砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
その夜の舞踏会はアベルとカインに女性たちの視線は釘付けだった。

男盛りの色気たっぷりのアベルに中性的な魅力のカイン、対称的な二人が揃って見られるのもこれが最後となれば、女性たちも浮足立つというもの。

女性たちがアベルを取り合っているのを少し離れたところで見守りながら、カインは酒のグラスを仰ぐ。

ーー見納め、か。

ブリュオー王国へ行ってしまえば、もう二度とここへ戻ってくることはない。
あの輝くような笑顔も力強い腕も全てここからなくなってしまう。そしていずれはアイリーン王女のもの。

ーー離れたくない。ずっと、ずっと死ぬまでそばにいたい。だって、私はアベルの前でだけ女でいられる。本当の自分でいられる。あなたを失うということは本当の自分も失うということ。
アベル。
私は男で生まれたかった。男同士の友情で素直にまっすぐあなたの側にいられたと思うから。
こんなやっかいな体のことであなたを困らせることもなかった。
女の私は、ここにいるどの令嬢よりも貧素で、いつも怯えておどおどして、アベルのいない世界なら消えてしまいたいと願って。でも願いは叶わないのだと諦めてる。

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