砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ーー俺のこと、キライなのか?


息子の顔とアベルが重なる。まるでアベルから問われたような錯覚にとらわれた。

「ぼく、しってる。アベル、ブリュオーにいっちゃうんだよね。もう、あえなくなるんだよね。ぼく、さみしいよ。
だって、ぼく、アベルのこと、だいだいだいすきなんだ!」
「アルス……!」

バカみたいだ。意地を張ってばかり。自分をごまかしてばかり。
最後くらい、アルスのように素直になってみても、いいじゃないか?

「知っていたんだね、アルス。きっと、アベルもアルスにあえなくなるのは淋しいと思うよ。私も淋しい。私もアベルのこと大好きだから」

大好きだから。
ついに言葉にしてしまった。本当の気持ちを。

「さみしいね、カイン。おわかれしたくないね」
「そうだね。お別れしたくない。でも、もう、決まったことなんだ」

一度素直になってしまえば、もう止まらない。カインはアルスをぎゅっと抱きしめて二人で思うままに泣いた。

アルスは子供らしく泣きつかれてカインのベッドで眠ってしまった。

ーー私にはアルスがいる。アベルが遠く離れても、アルスがいてくれるならどんなに辛くても生きていく。砂上の城も、慎重にしていれば崩れない。
だから、心配しないで。

眠ってしまったアルスに毛布を優しくかけると、カインは立ち上がった。

自分でさえ知らない『本当の自分の姿』を待っている人がいるのだ。



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