砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
小鳥のさえずりにカインは重いまぶたをゆっくりと持ち上げた。

とたんに鍛えられた広い胸板が視界に飛び込んでくる。
ぎゅっと押し付けられるようにアベルに抱き寄せられたまま、気を失うように眠っていたようだ。

昨夜、カインは身も心もただの女になった。
感情を抑えることなく、彼が与えてくれる快楽の嵐の渦に素直に飲み込まれた。
アベルの名を呼び続けた。今宵はただ一夜の夢。ひたすら愛に狂え、とばかりに。

ただ、愛してるとは言えなかった。
その一線を超えてしまえば、カインはもうアベルの手を離せなくなる。


もう、これが最後。
アベルに抱きしめられて目覚める、こんな幸せな朝は二度とこない。

ーーどうしよう。アベルへの気持ちがあふれて、とめられない。息もできないくらい、苦しすぎる。


愛しています。
あなたを愛しています。
……行かないで。


唇だけを動かして、声にしないつもりだった。だけど、強すぎる思いは吐息となってわずかにもれてしまう。
ささやき声よりもっともっと小さな、声といえないほどの言葉。


< 156 / 246 >

この作品をシェア

pagetop