砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「やっと、言ってくれた」

頭上からこの上なく優しい声が降ってきた。カインはとっさに手で口元を覆った。だがアベルはその手をつかんで、指を絡めてその指先にやさしいキスをする。


「眠っていると思っていたのに」
「眠れなかった。眠ってしまうと全てが夢で終わってしまいそうで。一分一秒でもお前を感じていたかったから。
カイン。俺の愛はお前のものだ。これから何が起ころうとも、俺の運命の人はお前だけだ。どうか、それを忘れないでくれ」

「アベル……それなら、いっそ、壊していってください。
私の中の『女』の部分を。あなた以外の誰も必要としていないし、これからもあなただけを覚えていたい。だから、お願い、壊していって」

離れがたく、再び肌を重ねる。本当に壊れてしまうのではないかというくらいに強く、アベルは彼女の最も深くまで穿ち、痕跡を残していった。

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