砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
別れのときは無情にも迫ってくる。
「カイン…どうして君は…君はなぜオルディン家の四女ではないんだ。
せっかく、オルディン家に女として生まれたのに」
離れがたくカインを抱き寄せながら、アベルは苦しげに言った。
「きっと、私がオルディン家の四女だったら、これほどアベルの側にはいれません。
公爵家の四女ではあなたの目に止まることさえなかったでしょう。
私が男として生きていたから師レオポルトのもとで学ぶことが出来て、アベルに仕えることができたんです」
「違うな。
君がオルディン家の四女だったら、今頃俺たちは夫婦となりたくさんの子どもたちに囲まれて愛に溢れた家庭を築いていただろう」
カインの瞳が大きく見開く。そしてスッと一筋なみだが頬を伝った。
「…やめてください。そんなこと、考えたって無駄です。現実は…」
「君と幸せになりたかった、カイン」
「…やっぱり。望みなんて叶わない。それならば望まない方がいいんです」
「一人にしてすまない」
「私は、一人じゃありません。私にはアルスがいます。あなたが私に与えてくれた大切な家族がいます。これからはアルスを立派に育てることを生きがいに努力します。それはとても幸せなこと。
だから、アベル。私のことは心配しないでください。あなたは、アイリーン王女を愛して」