砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「私が当主で居る方がリスクが高い」
「なぜ……」

カインは真剣な眼差しで、小さなアルスの肩に両手を置いた。

「君は……君を産んだのが誰だか、気づいているのではないか」

アルスの母でカインの妻とされる女性は、公にされている情報ではオルディン家の遠縁の女性だ。
だが、アルスはそれは事実ではないと思う。なぜなら遠い記憶があるからだ。
アルスの記憶。もうかなり薄れているその記憶の中で、乳を飲んでいる自分をやさしく見下ろす母の顔は、カインだった。

男性として生きているカインがどうしてアルスを出産することになったのか。そもそも父親が誰なのかアルスは知らない。
聞いてはいけないことなのだと、幼いながらに感じている。
カインは母としてアルスに接したことはない。
いつでもオルディン家当主として厳しく、父母という概念にとらわれない『親』として無上の愛情を注いでくれた。
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