砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「アルベルト。
これは小さな火種だ。今回はうまく消せたが、今のままでは次から次へと火が撒かれるだろう」

「フォトキナは平和に慣れ過ぎたんです。そもそも、兄王の危機管理が甘い。師レオポルトもカインもいるというのに、臣下の意見を聞かずとにかく跡継ぎのことしか頭にない。情けない限りです」

[おそらくこのままではフォトキナに未来はない。アルベルトが国王にならないかぎり]

「え?何ですか?
陛下は時々その不思議な呪文のような言葉で何をおっしゃってるんですか?」

ラインハルトが発した独り言は、今ではブリュオー国民でさえ話すこともなくなった古語だった。ラインハルトはこの言葉が好きでまた、誰も理解できない安心感から独り言をつぶやくときはこの古語を愛用していた。

「気にしないでくれ。大したことじゃない。
それよりアルベルト、君がフォトキナ国王になるなら私は最大限の協力をするよ?
私は国土の拡大は望まない。そもそも、国民性の違いを受け入れつつ支配なんて面倒なことしたくないし。
それよりは同盟を組んで、お互いのうまいところだけを食い合いたい」

ラインハルトという人を知れば知るほど、惹かれていく。事態を把握しどうすべきか考える知識、他者の意見を聞く柔軟さで的確に国政を見極め、手のひらで転がすかのようにいとも簡単に国を動かしていく。
彼は国王としての素質に満ち溢れている。国王としての理想像がここにあった。

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