砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「まだ幼いアルスを王太子の名代だなんて無理がある。陛下の命令か?」

アベルはアルスと二人きりになると優しく話しかけた。

「いえ。自ら志願しました。
これは私がオルディン公爵として周囲に認めてもらうためのチャンスだと思いましたので。
家名と伝統にあぐらをかいて傲慢で使えない大人より、子供の私のほうが適任ですし。
ほら、こうやってブリュオーの軍隊の中にもあっさりともぐれました」

「ちょっと、待て。
まだ成人前だというのにアルスが爵位?
カインはどうした」

カイン。その名を久しぶりに口にしただけでアベルの心は若い青年のようにドキドキする。
だが。

南風が髪をなでていく。風からは剣のぶつかる音のような争いの音は聞こえない。運ばれてくるのは焦げた大地のにおいと静けさだけだ。

急に黙り込んだアルスの言葉を待ちながら、アベルの胸の高鳴りは次第に不穏なものに変わる。
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