砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「アルス、事実をそのまま述べなさい」
アベルに促されてアルスは意を決したようにアイスブルーの瞳をアベルにまっすぐ向けた。
「先代は、亡くなりました」
「カインが、亡くなった?」
ガンと頭を強く殴られたような衝撃がアベルを襲う。
互いの体が一つに溶け合い溺れるほどに強く抱き合った別れの日を、今でも鮮明に覚えている。
もう一度会える日を決して諦めない。その思いが今のアベルを支えているというのに。
それなのに。
奈落の底へと突き落とされるような絶望。
信じられない。信じたくない。
だがアルスが嘘を付く理由も見当たらない。言い淀んでいたアルスに事実をそのまま述べるよう促したのは自分なのだ。
「いや、そんな馬鹿な。
つい先日届いた報告書にも彼女の署名を確認した」
今でも変わらずカインを愛している。それなのにカインはもうこの世にいない。そんな事実を受け入れたくない。
身が裂かれそうなほどに切ない愛情が出口を失って暴れ、アベルから冷静な判断を鈍らせた。