砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
※
ーー彼女?
動揺してこぼしたアベルの言葉にアルスはハッとなる。
思いがけず、ずっと心に抱いていた一つの仮定が真実である可能性が浮上する。
ーー真実が知りたい。
アベルが動揺している今がきっとチャンスだ。
だが。
誰が聞いているかもわからないこの状況下で、個人的な会話は避けるべきだということも重々わかっている。
湧き上がる理性と衝動が幼いアルスの心のなかでせめぎ合う。
そう。
知りたいのはただ一つ。自分の父親は誰かということ。
カインが最後まで教えてくれなかった真実を知りたかった。その答えが目の前にある気がする。
アルスは慎重に言葉を選んだ。
「オルディン公爵のサインでしたら、私の手によるものです。母の書く筆跡を真似して練習した名残でしょう」
「そうか。俺でも気づかないほどよくカインのサインに似ている。
アルス、頑張ったんだな」
ーーあぁ、間違いない。アベルは真実を知っている。
カインの死で取り乱すアベルに『母』という言葉の罠を仕掛けた。
カインが女性でアルスを産んだことを知る、つまりアルスの父である男性だけ、かかる罠だ。
普通なら違和感にすぐ気づく程度の罠だが、アベルは簡単にかかった。
こんな時だというのに、自分のことを知りたいだなんて嫌になりそうだ。
だが、おかげで『もしかしたら』は、確信に変わった。
ーー彼女?
動揺してこぼしたアベルの言葉にアルスはハッとなる。
思いがけず、ずっと心に抱いていた一つの仮定が真実である可能性が浮上する。
ーー真実が知りたい。
アベルが動揺している今がきっとチャンスだ。
だが。
誰が聞いているかもわからないこの状況下で、個人的な会話は避けるべきだということも重々わかっている。
湧き上がる理性と衝動が幼いアルスの心のなかでせめぎ合う。
そう。
知りたいのはただ一つ。自分の父親は誰かということ。
カインが最後まで教えてくれなかった真実を知りたかった。その答えが目の前にある気がする。
アルスは慎重に言葉を選んだ。
「オルディン公爵のサインでしたら、私の手によるものです。母の書く筆跡を真似して練習した名残でしょう」
「そうか。俺でも気づかないほどよくカインのサインに似ている。
アルス、頑張ったんだな」
ーーあぁ、間違いない。アベルは真実を知っている。
カインの死で取り乱すアベルに『母』という言葉の罠を仕掛けた。
カインが女性でアルスを産んだことを知る、つまりアルスの父である男性だけ、かかる罠だ。
普通なら違和感にすぐ気づく程度の罠だが、アベルは簡単にかかった。
こんな時だというのに、自分のことを知りたいだなんて嫌になりそうだ。
だが、おかげで『もしかしたら』は、確信に変わった。