砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

アベルの大きな手がアルスの頬に触れる。マメだらけの硬い親指が目尻を拭う。

アルスは自分が泣いていることに気づいていなかった。

「落ち着いた話し方や俺を気遣う素振りもカインにそっくりだ。
キミの中に、アイツは生きているんだな」

ぎゅっと抱きしめてくれたアベルの広い胸が震えている。カインの死に動揺しているのだろう。


「殿下。
僕を、親をなくした可哀想な子供だと哀れんで、これから尋ねる無礼な質問を許してください」

「俺に聞きたいことがあるのか?
アルス、俺にそんな遠慮はいらない。何でも聞いてくれ」

「殿下は先代を『彼女』と表現された。
もしやと思い、僕は『母』の話をしました。
僕が『母』と言ったら、それが先代を指している前提で話を続けられた。
つまり。
先代の秘密をご存じなのですね?」

いつものように落ち着いて見せたいが、感極まってホロホロと涙が頬を伝い、声も震えていた。


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