砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


アルスはアイリーン王女と同じ八才。まだ子供として無邪気に甘えていい年頃のはずだ。
だが再会してからのアルスとの会話は、まるで大人と話していると錯覚するほど落ち着いていた。

しかし今、泣きながらすがるようにアベルを見つめる姿はあどけない子供だ。
やはり母を亡くしたその悲しみは計り知れない。
しかもアルスにとってはたった1人の親だったのだ。

「…まいったな。さすがはカインに育てられただけのことはある。
大丈夫、秘密は墓まで持っていく覚悟だ」

アルスの抱える悲しみを包み込むように優しく、アベルに頼れるように強く伝えた。

「その秘密をご存知なら。教えて下さい。
もしかしたらアベルは僕の……」

涙があとからあとから溢れて上手く言葉に出来ない。そんなアルスをアベルは万感の思いを込めてぎゅっと抱きしめる。

知りたい真実は今のアルスの支えになるだろうか。

ーーなぁ、カイン。君が伝えなかった真実を俺の口から伝えていいものだろうか。

俺は君の亡骸も墓もこの目で見ていない。だから、君がもうこの世にいないという実感がない。
それでも君が人生のすべてをかけて背負ってきた『オルディン公爵』の名を幼いアルスが背負う現実に、君はもういないのだと思い知る。

アルスにはもう親と呼べる人がいない。
まだ幼いアルスには親の庇護は必要だ。
そばにいられなくても、俺はアルスの絶対的な味方でありたい。
だから。

許せよ。

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