砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「アルス。君は母を亡くし、俺は最愛の人を亡くした。今はその悲しみを分かち合おう。
あぁ、こんなことならフォトキナを離れるんじゃなかった。今際の際(いまわのきわ)にアルスのことを俺に託してほしかったよ。
今までは国策のためと思い甘んじて人質の立場を受け入れてきた。だが、その結果がこれだ。
フォトキナは国力の低下させ、隣国の横暴さえ止められない」

「僕も小競り合いだと聞いていたのです。
ですが、いつまで経っても収束した報告が上がってこず、しかも農作物の収穫の時期になっても作物の収量に関する報告がない。
これは自分の目で確認したほうがいいと判断してこちらへ出向いたら、もうこの有り様で。
師レオポルトへすぐに報告して、村のはずれの森に住民を避難させ、医学の心得のある者を呼びました」

まだ八歳だということを忘れそうだ。兄王よりよほど事態を把握している。

「なるほどな。フォトキナの騎士団より俺達の到着のほうが早かったのか」

「騎士団は来ません。国王陛下は事態を重く受け止めておられません。師レオポルトが説得しているのですが、無駄に隣国と争わないと言って騎士団の派遣を許可していただけない」

眉間に皺を寄せて唇を噛み、アルスは悔しさを滲ませる。

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