砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
泣きつかれて眠ってしまったアルスを信頼する部下に任せてアベルは夕暮れの中、一人森の中に向かった。

とにかく一人になりたかった。

考えることが多すぎる。今まで人質のとしてブリュオーで息をひそめるようにして生きてきた。敵を作らぬように目立たぬように、ただ、フォトキナにいるカインとアルスの無事だけを祈って生きてきた。

だが、カインはもういない。幼いアルスを一人残していってしまった。
大人顔負けの知能のアルスだが、本来なら親に甘えていい年頃だ。子供らしく毎日を遊んで暮らしていていいはずなのに。

おそらく兄王はアルスを子供だと見下しているのだろう。その兄王の周囲にいる貴族らも同じように子供の意見だと耳も貸さない様子が手に取るようにわかる。

フォトキナを離れて三年。それでも貴族たちの顔ぶれはその後嗣にいたるまではっきりと覚えている。長い歴史に守られ保守的な彼らがアルスの言葉に耳を貸すはずもない。

ーーカイン。本当にもう君はいないのか。君のいない世界で俺は生きていかないければならないのか。

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