砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「おかえりなさい」

臨時の診療所としている炭焼き小屋に戻ると、神妙な面持ちのアルスが待っていた。

住人たちは森の中の大きな洞窟を仮のすみかとして寝泊まりをしているが、カインは重症患者と一緒にこの小屋で寝泊まりしている。
幸い現在は重症患者がいないので、空いたベッドをアルスが使っていた。

「ブリュオーの兵士は非常に優秀ですね。来て早々にフォトキナの国境警備隊を統率し、見回りの強化とあわせて村の再建計画まで立ててくださいました。
しかもここへ来る前に不法に武器を売買していた悪徳商人もそれに加担していた貴族も弾劾してきたとのことです」

「これでこの地は平穏を取り戻すだろう。
だが、ブリュオーに大きな借りを作ったうえに、フォトキナの弱体化が向こうに露見してしまった。
ブリュオーのラインハルト陛下はどのように動くだろうか」

考え込むカインの前で、アルスは落ち着かないようにもじもじとしている。何かを言いかけては言葉がつかえて出てこないような、そんな素振りだ。

言いたいことなど聞かなくてもわかる。アベルについてだろう。

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