砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「そう、ですか。決心されたのですね」

カインはそれだけ言うと目を伏せた。

「これからも俺のそばにいろよ、アルセウス・オルディン公爵の母君」

呼ぶに事欠いて、アルスの母と呼ぶようにしたらしい。それもどうかと思うが。

「殿下のそばにお仕えすることは出来ません。私は名前さえ捨てた人間です」
「だめだ。忘れたのか、お前の生きる価値は、ここにある。俺に仕えろ。捨てるくらいなら俺に尽くせ。俺にはお前が必要なんだ。
俺は全力でお前を守るから」

アベルに女であることが知られ、死を選んだカインを思いとどまらせたあの時と同じアベルの言葉。
再びその言葉がカインを揺り動かす。

自分の全てをかけて、この人のために生きていきたい。
別れたあの日から心の奥底に閉じ込めておいた彼への愛情があふれ出してカインから冷静な判断を奪おうとする。

だが。

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