砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「残された人生は一人の名もなき者として自由に生きていくつもりです。
出自を探られることも避けたいですし、そもそも自分は男としての教育しか受けてきておりません。
私にはお妃として国王となられる殿下の隣に立つことなどできません」

それがカインの答えだった。
しかし。

「そうか。ならば、俺は国王になんかならない。俺だって国王になる教育なんて受けてないし。
それどころかこの国は生まれながら王になるべく育てられた兄を壊したんだ。そんな国の王なんてめんどくさいもの誰がやるものか」
「めんどくさい……」

誰しもが欲しがる王位を面倒だと言い切るアベル。昔のわんぱく小僧のままの口調に思わず苦笑いをしてしまう。

「だから、壊れないように俺を支えてくれ、愛しき人よ。
それともお前の愛もカインの死と共になくなった、とか言うか?」

アベルへの愛情がなくなるはずがない。アルスの姿にアベルを重ねてはうれしさと切なさとが押し寄せた。一日たりとも忘れたことなどなかった。

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