砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ーー誰より優雅に踊れるんじゃないか、お前なら。見せてみろよ。

アベルの目がそう言っている気がした。

「カルヴィン、無理しなくていいわ。私がリードしてあげるから。最初は右足からよ」

サラは不安げに言う。ヒールのついた靴の分、彼女の方がカインより頭一つ背が高い。

「弟をダシにして、アルベルト王子に近づくチャンスを得られて。今宵は幸運でしたね、姉上」
「…えっ」

渋々サラの手を取るなり、カインがため息をつきつつ言った。

「その礼として、身長差はフォローして下さいね」

音楽に合わせて、二人はステップを踏み出す。

カインは今宵の最年少で最も小柄で華奢だった。
だが、そのカインの踊りは正確で優雅で繊細で。今宵集った男性の中でも群を抜いて美しかった。
明るく、楽しく情熱的で色気あるアベルとは見事に対照的だった。


一曲踊りきるとカインは、まるで何事もなかったようにアベルの背後へと戻った。


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