砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「そなたがカレン・オルディンか」
「はい」

レオポルトに深く敬意を払い頭を深く下げたカレン。所作はきちんと教育を受けていることがわかる。服装もシンプルな装いで悪くはない。
だが、銀の髪は手入れが足りず艶がない。スカートのすそを掴む指先は不自然な紫色に染まり、ガサガサしている。さすがは田舎住まいだと思わざるを得ない。

「私はそなたを認めるわけにはいかない。アベルはこの国の救世主となる。だが、これまで愚王子を演じてきことにより反発する勢力も多いだろう。
そんなアベルを支え、ともに苦難を乗り越えていける女性を選びたい。カルヴィン・オルディンの妻だったそなたでは反発勢力を増長させるだけだ。
すまないが、そなたを認めるわけにはいかない」

「師レオポルト!それは!」

反論しようとするアベルを、カレンは頭は下げたままその紫色に染まった指先一つで制止した。

「わかりました。もとより自分の立場は理解しております。正妃という高貴な立場には興味もございません。
私は陰からアルベルト殿下とアルスを支えていきます。決して表に出ることは致しません。
それさえも許されないのならば私は王都を去ります」

抑揚なく淡々と告げたカレン。どうやら彼女とアベルでは温度差があるようだった。彼女を説得するのは簡単そうだとレオポルトは胸をなでおろした。

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