砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
アベルの顔にもはや笑みはない。おそらく女性のことも頭から消えているだろう。

定例議会の内容は恐らく体調のすぐれない国王陛下の譲位についてだ。
いよいよディアルド王子が国王となり、アベルには第一王位継承権が与えられることとなるに違いない。

ーーここが潮時かもしれない。アベルが王太子ともなれば表舞台に立つ機会もぐっと増える。そこに私が並んで立つわけにはいかない。
だけど。

カインは緊張で強ばったアベルの横顔を見た。
彼の度量、器の大きさ、決断力、そして何より人を惹きつける魅力。
本当の彼の姿を知れば、アベルこそが国王として人の上に立つのにふさわしい人物なのだと、誰もが思うだろう。

だが、アベルには真面目で堅物な兄がいる。
兄ディアルドは、幼い時から時期国王として相応しい人物になるように帝王学を叩き込まれた。本来なら子供らしく遊んだり甘えたりわがままを言うことも許されず、彼は常に束縛されて生きてきた。
だから周囲がアベルを王位継承者として担ぎ上げることがないように愚王子を演じてきたのだ。

持て余す程の才能など、己には必要ない。
だが…誰か一人くらい、本当の自分をさらけ出せる相手がいたら、どんなに楽だろう。
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