砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
だが、一方でアベルが王太子という事実が、皆に一抹の不安を抱かせていることがわかる。なぜなら、挨拶の為に立ち上がったアベルには刃のような冷たい視線が浴びせられたから。
アベルは言葉を探す。
議員の不安を掻き立てれば、そこから諍いが生まれるかもしれない。かといって立派な言葉を並べれば、それまで兄を盛り立てることで保身を図ってきたアベルの立場を覆すことにもなりかねない。
アベルはチラリと背後のカインに目配せした。カインは全てを承知したとばかりに、小さくうなづいた。
「兄上は、きっと皆の期待に応えて素晴らしい国王となる。そんな兄上と同じ血が流れていることは私の誇りだ。その誇りを胸に…えー、あー、兄上の、手伝いを、いや、違うな、えー」
「微力ながら全身全霊、尽力いたします」
後半、言葉に詰まったようにもごもごするアベルの背後から、カインが小さな声ではあったが、その場の誰もが気づくくらい体を乗り出して訂正した。
「そっか。
私とて誇りあるフォトキナ王家の王子だ。微力ではあるが全身全霊で尽力していく。以上」
アベルは素直にカインに従って言い改めた。すると、ゆっくりと拍手が起きる。
アベルだけでは心許ないが、あのカルヴィン・オルディンがいるなら大丈夫だと、皆安心したのだ。
身体が弱いことが最大の難点ではあるが、師レオポルトさえ舌を巻くほどの秀才だと、誰もが知るところだった。
それこそがアベルの思惑通りであった。
アベルの行動や発言は、秀才カインの助言によるもの。決してアベルが優秀なわけではない。そう植え付けることが出来た。
アベルは言葉を探す。
議員の不安を掻き立てれば、そこから諍いが生まれるかもしれない。かといって立派な言葉を並べれば、それまで兄を盛り立てることで保身を図ってきたアベルの立場を覆すことにもなりかねない。
アベルはチラリと背後のカインに目配せした。カインは全てを承知したとばかりに、小さくうなづいた。
「兄上は、きっと皆の期待に応えて素晴らしい国王となる。そんな兄上と同じ血が流れていることは私の誇りだ。その誇りを胸に…えー、あー、兄上の、手伝いを、いや、違うな、えー」
「微力ながら全身全霊、尽力いたします」
後半、言葉に詰まったようにもごもごするアベルの背後から、カインが小さな声ではあったが、その場の誰もが気づくくらい体を乗り出して訂正した。
「そっか。
私とて誇りあるフォトキナ王家の王子だ。微力ではあるが全身全霊で尽力していく。以上」
アベルは素直にカインに従って言い改めた。すると、ゆっくりと拍手が起きる。
アベルだけでは心許ないが、あのカルヴィン・オルディンがいるなら大丈夫だと、皆安心したのだ。
身体が弱いことが最大の難点ではあるが、師レオポルトさえ舌を巻くほどの秀才だと、誰もが知るところだった。
それこそがアベルの思惑通りであった。
アベルの行動や発言は、秀才カインの助言によるもの。決してアベルが優秀なわけではない。そう植え付けることが出来た。