砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
馬に乗り、二人は初夏の風を感じながら久しぶりにいつものコースへと出た。

「やっぱり、気持ちいいなぁ。お前も久しぶりだろ?どうだ、カイン?」
「空気がきれいで、体が浄化されていく気がします」
「お、見ろよ、鳥が子育てしてる。
親鳥より雛鳥の方がデカいぞ。面白いな」

アベルが指差した樹上。
小枝や青葉の間から鳥の姿が見えた。

「あれは、春告鳥の雛ですね。
餌を与えているのは本当の親鳥ではありません。春告鳥は、他の鳥の巣に卵を産んで雛鳥を育てさせるのです」
「それって確か、春告鳥の雛がその巣を作った鳥の産んだ卵を巣から落とすんじゃなかったか?
かわいそうに自分の子供は殺されているのにあんなに一生懸命餌を与えて育てて…。
恐ろしい習性だよなぁ」

二人で樹上の鳥たちを眺める。
生存競争の先には生か死しかない。命がけの戦い。
命の営みの強いエネルギーを感じた。

目にも鮮やかな森の木々。
木々の間から見えた青空には大きな入道雲。
もしかしたら夕立があるかもしれないが、しばらくは大丈夫そうだ。
そんなことを思いながら、カインはアベルの後を追う。

カインは珍しく興奮していた。久しぶりにアベルに会えた喜びも、気持ちを高ぶらせる要因になっていたのだろう。夢中で馬を走らせた。ただアベルの背中を追いかけることしか、頭になかった。
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