砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
いつもと変わらない明るいアベル。
昨日の事など何もなかったようなそぶりに、カインは肩透かしを食らった気分だった。

ーーバカみたいに意識していたのは私だけ。

男だと偽っていた事実はともかく、恋愛について百戦錬磨のアベルにとってカインの体を抱いたことなどあまりに些細なことだったのだろう。

ーーそれでいい。今まで通り男として接していけばいい。余計なことは考えず、仕事に集中しよう。

もやもやする気持ちを押し込め、カインはアベルと向かい合う。

「では、まず、この書類の山を片付けてしまいましょう」
「あぁ、わかった」

息をつくヒマもない仕事の量。カインはそれをみるみる振り分けていく。まるで無駄がない。

「こちらは私が目を通しました。アベルはサインだけで大丈夫です」
「わかった。こっちは終わった。内容に不透明な所が多い。却下」
「はい」

何ヶ月も会っていなかったことなど嘘のように、二人の息はぴったりだった。


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