砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

その夜、カインはアベルと共に新国王から夕食に誘われた。

広いテーブルの上座に国王ディアルド四世。その隣に正妃ジョセフィン。下座にアベル。アベルの隣にカインの席が設けられ、その日の夕食は始まった。

「久しぶりだな、オルディン公爵。
公爵が来てくれてよかった。王太子としての仕事はアベルには少々荷が重いようでな。師レオポルトの助力だけでは回らなかったのだ。
アベル、仕事を難しく考えることはないんだぞ。先人が築き上げた伝統を尊重し、踏襲していけば社会は安定するのだから」

伝統に則ってさえいれば、過度にこだわることはなく物事を終わらせるタイプのディアルド。アベルが彼の取りこぼした仕事を拾い、問題が大きくなる前に解決しているとは思ってもいないのだろう。

ーーアベルが陰で支えているとも知らずにお気楽な方だ。

カインは少し口元を緩ませてディアルドに頭を下げる。
カインに代わって口を開いたのはアベルだ。

「ありがたいご啓蒙に感謝します。
カインのおかげでなんとか責務を果たすことができそうです」
「師レオポルトも認めた頭脳。オルディン公爵、アベルをよろしく頼みます」

ディアルドは、アベルの謙遜を言葉通りに受け取った。アベル自身の優れた能力には、やはり気づいていない。

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