砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「サラを愛妾に、か。サラのように明るくて、ハッキリと物を言う性格は陛下に似合いだとは思うが」

自室に入ると開口一番、アベルが言った。

「あの自由奔放な姉が、生まれながらにして王妃となるべく育ったジョセフィン様と上手くやっていけるとは思えません。
それにサラには他に想う人がいると」

サラがアベルに好意を寄せていることは知っている。恐らくはアベルも気づいている。

「サラは陛下の想い人だ。かわいそうだがサラの気持ちには応えられない。
ジョセフィンとは案外うまくやるだろう。何しろサラは人当たりがよくて誰からも好かれる」

アベルはそう言うと、棚から酒瓶を取り出しグラスに注いだ。

「今、初めて陛下がうらやましく思う。
俺も好きな女と一緒に暮らす未来が欲しいよ」

アベルの望む未来はささやかで、でも何より難しい。

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