砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
全てが終わると、アベルはカインの傍らで静かな寝息をたて始めた。

その無防備で安らかな寝顔を、カインは飽きることなく見つめた。

アベルのこんな穏やかで満たされた様子は初めて見たかもしれない。
いつも酒の力を借りながら、浅い眠りにしかつけないアベルが、これほど深く安らぐところは珍しい。

ーーゆっくり、休んで下さい。

カインはアベルを起こさぬよう、慎重にベッドを降りた。そして衣服を身につけるともう一度アベルを見る。

月光に照らされて浮かぶその寝顔はまるで彫刻のように美しい。
多くの女性たちがアベルに抱かれたいと望んでいる。そして、あわよくば彼に愛されて、彼の子供を産みたいと願っている。

いつの日かきっと、アベルは見つけるだろう。最高のパートナーを。そして、カインが知るアベルの全ては最愛の女性に…


胸がズキンと痛むのを感じ、カインは慌ててアベルから目をそらした。


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